子どもたちを引きこもらせる教育システムという名の悪魔

 じゃあ,甘やかしている親が悪いのかというと,それだけではない。もちろん,親の価値観や子どもに対する接し方,夫婦関係などは当然影響してくるでしょう。子ども自身の資質の問題もある。しかしいちばん大きな要因は,教育システムそのものにあるのだと思います。今や大企業だって決して安心とはいえない時代になってきているけれど,それでも,いい学校に入って一流企業に就職することをよしとする価値観は根強く残っている。今引きこもっている人たちの多くは,そういう価値観の全盛期に学校に通っていたのです。
 学校の先生たちの多くも,無意識のうちに,きちっきちっと宿題をやってくるような生徒を大事にする。カリキュラムに沿って滞りなく授業を進めていくためには,そういう生徒の方がやりやすいわけです。受験制度や学校というシステムに順応できない子,決められた勉強より自分の好きなことをやりたいと思うようなタイプの子は,自ずと排除されてしまう。
 (中略)
 従来の受験体制と学校制度は,経済的発展を第一とする社会に都合のいい人間を作ってきたわけですが,同時に大量の引きこもりも生み出してしまった。いまだにそれにとらわれ,その枠からはみ出した子どもたちを駄目だと決めつける大人たちの中にこそ,悪魔が潜んでいるのだと私は思います。わたしたち大人が悪魔となって,駄目だ駄目だと言葉や視線でささやきかけるから、そういう子どもたちを引きこもらせ,なかなかその状態から抜け出せなくさせてしまっている。引きこもりの子どもたちに落ちこぼれのレッテルを貼るのをやめ,まず引きこもりを誘うような欠陥のある教育システムを見直してみる。そのほうがよほど生産的じゃないでしょうか。