2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

 醜い日本の私   

「呼びかけ」の規則 萩原朔太郎の詩「遺傳」に次の一節がある。 「犬は病んでゐるの? お母さん。」 「いいえ子供 犬は飢ゑてゐるのです。」 「いいえ子供」という呼びかけだけで,非現実的で不気味な雰囲気が出てくる。朔太郎はこの効果を知って,この表現…

 戦争を知っていてよかった

昭和天皇のご不例が長引いていた頃,私は新聞に『天上の青』という連続殺人の小説を書いていた。大久保清という連続殺人犯の事件をモデルにして,「あらゆる人の中に神がいる」という証明を試みようとしていたのである。事件が起きてから十七年も経ってしま…

 悩む力

「自分の城」と築こうとするものはかならず破滅する。 これは私もそうだったのでよく分かるのですが,だれもが自分の城を頑強にして,塀も高くしていけば,自分というものが立てられると思うのではないでしょうか。守れると思ってしまうのではないでしょうか…

 死なないでいる理由

受動文とは実は主体性の強い表現である。 「うみたての卵」と「うまれたてのひよこ」 または 「うまれたての卵」と「うみたてのひよこ」 卵の場合,それを表現の中心に据えたとしても,卵に身を寄せた表現をとることはできない。わたしたちは親鳥の主体性を…