被害者感情

 刑事事件の被害者や遺族に対して,それまでのこの国の行政やメディアが,あまりに無関心で冷淡であったことは確かだ。だから改善されねばならない。それは当たり前。でも被害者や遺族を救済することと,加害者にもっと思い罰を与えようとすることは,本来ならいっしょにするべきことではない。でもそれが一緒になってしまった。
 法やルールに背くものに対して,かつての領主や皇帝や王様や独裁者は,本能的に思い罰を与えたいと考える。それは歴史を見れば明らかだ。独裁政権や王政の時代,刑罰はとても重かった。つまり司法の近代化の歴史とは,厳罰化とは逆な方向に進んできた歴史と言い換えることもできる。
 でもこの国ではそれがひっくり返ってしまった。しかも思い罰を与えよとの声が,為政者からではなく,国民の側から沸き起こった。